2024.10.27
この度、ヒューマントラストシネマ渋谷にて英語字幕付き上映を開催。上映後にフミ役の祷キララさん、岡田先生役の中島歩さん、空音央監督が登壇し、トークイベントを行いました。
今回は英語字幕付き上映ということもあり、プロデューサーの増渕愛子さんによる英語通訳ありのイベントでした。
ほぼ満席の大盛況の場内。まず初めに登壇した3名それぞれから一言ずつ挨拶。空監督に続き、祷さんも日本語で話したあとに、流暢な英語であいさつをしました。中島さんも二人につられ開口一番に「Hi!」と話し始め、会場が一気に温かい空気となりました。
【祷さん、中島さんのキャスティングは『やまぶき』と『偶然と想像』をみて決めた】
空監督に祷さん、中島さんをキャスティングした経緯を尋ねると、監督は「メインの生徒役5人はオーディションですが、二人は違いました。キララさんは山﨑樹一郎監督の『やまぶき』で本作のフミと似たようなサイレントスタンディングデモをやる高校生役で、それを観ていいなと思いました。映画開始の5分でアップのショットがあったのですが、それがとても印象に残っていました。中島さんは濱口竜介監督の『偶然と想像』の1話目の元カレ役がとても良くて、そのあと1回ご飯を食べにいって…」と話すと、中島さんは、「僕も、濱口さんが“すごくいい監督がいる”と教えてくれて、それで今回の出演に至りました」と裏側を明かしました。
【フミや岡田先生のモデルは…?】
フミや岡田のモデルとなった人物がいたのか尋ねると、空監督は「フミは直接的なモデルはいませんが、まず本作は、関東大震災の背景があって、フミのキャラクターは大正期の日本のアナキストの金子文子さんが念頭にありました。もうひとりは隣にいる増渕愛子プロデューサーがモデルになっているところもあります」と明かしました。
岡田先生については「モデルは特にいなかったのですが、完成して本作についてインタビューをされる中で、インタビュワーの方に「『日本春歌考』(大島渚監督/1967年)の伊丹十三が演じる先生に似ている」と言われて、確かに!って思いました。脚本を書いているときは意識していなかったんですけど、実際に自分も観ていた作品なので自然と影響をうけていたかもしれないです」と振り返りました。
【コウとフミの関係で大事にしたのは“仲間ができた喜び”】
「フミを演じる上で意識したことがあれば教えてください」という質問に対して、祷さんは、「私はこの映画は“政治」”と“青春”の二つのアプローチがあると思っていて、フミは5人の友情の物語とは違う道をいく役だけど、フミはフミで本当は友達が欲しいのか、『友達はいらない』と言っているけど根底ではどう思っているのか、フミの中での“友情”を大事にしたいなと思いました」と答えました。
また、続けて「準備しているときに苦戦したのは、いろいろなパターンを想像することで、フミは友達が岡田しかいない、どういう気持ちでフミは過ごしているんだろうと考えたときに、もしかしたらフミは岡田のことが好きかもしれないという可能性を考えたこともありました。ですが、すぐに辞めました笑」と当時の葛藤を振り返りました。
それを受けて監督は「ひとつ大事にしたかったのは、コウとフミとの関係で、コウからフミへの気持ちはもしかしたら恋心があるかもしれないけど、フミは“やっと同世代に話の通じる仲間ができた喜び”にフォーカスすること。ある意味で分かり合える相手が見つかったというのが、恋愛感情を抜きにしたとしても、一番ロマンチックかもしれないですね」とコウとフミの関係性について話しました。
【岡田という役の矛盾。岡田とフミは当初は兄弟の設定だった!?】
主人公ユウタとコウの先生の岡田を演じてみてについて、中島さんは「映画を観ていて、『子供は黙っていなさい』というセリフがあるんですが、自分がそういう年齢になっちゃたなって(笑)。岡田はコウに「今日デモあるけど来る?」というけど、「子供は黙っていなさい」と怒るシーンもある。その矛盾が岡田にはあって、でもどちらも彼にとっては正義があることだと思います。彼の矛盾した存在、コウやユウタの母親たちなども含めた大人勢の存在というのが、観ている大人の方々に共感をあたえているのではないかと思いました」と語りました。
続けて空監督が「今話しながら思い出したんですけど、だいぶ前の脚本で岡田とフミが兄弟だったという設定がありました。裏設定として、フミが高校1年生とかに本を読んだことでいろいろ思った不満なことを岡田先生が聞いてあげて、みたいな。でも、フミはフミならではの自主的な考えをもてる人だなと思ったので、その設定はやめました」と裏話が明かされました。
【日本の空白の時間を感じた】
本作に対して中島さんは「僕と祷さんの世代の違いを考えたときに、僕は1988年生まれで学生のころに一人でデモにいったこともあったけど、レジスタンスの方に出会ったことはなくて。少し僕より下の世代が政治的な議論をしたり学生運動を始めたりしていて、「その熱狂うらやましいな」くらいに20代半ばくらいに思っていました。こういうことって広げて考えてみると、音楽や映画とかを作っている僕らよりも少し上の世代は虚無というかナンセンスを描いてきて、僕はそれをみて育ってきたから、アクションを起こす学生運動世代~それがなくなった時代という空白の時間みたいなものが日本にはずっとあるだろうなと今日映画を観て思いました」と作品の中でで描かれている政治性に因んで話しました。
監督から祷さんへ「2000年生まれだけど、どう感じます?」と尋ねると、祷さんは「私はいま24歳で、最近流れが変わってきているのかなって思うんですけれど、これは自分が歳を重ねているからなのか、社会が変わっているかわからないです。さっきの中島さんの話でいうと、私もレジスタンスの人や声を挙げている人に出会ってこなくて。でもこの間の都知事選とかも、投票率が上がっていたし、「自分たちの未来の話だよね」いう空気感を感じるようになって、近い世代の友達と話すようになりました。でも自分がこの仕事をしているからなのか、実際に自分たちの世代が変わっているのかっていうのはどうなんだろうと思います」と同世代に対しての素直な気持ちをお話されました。
観客の中にDJ役の ¥ØU$UK€ ¥UK1MAT$Uさんの姿が!
最後に一言挨拶をいただく前に、空監督が「今日この会場にDJ役の行松陽介さん(¥ØU$UK€ ¥UK1MAT$U)がいらっしゃっています!」と紹介があり、会場は大きな拍手に包まれ、さらに盛り上がりをみせました。そして代表して監督から「すごく面白い話をする機会を与えてくれてありがとうございます。もっともっと話したいことがあるのですが、また後日ということで…!今日は本当にありがとうございました」と挨拶がありイベントは大盛況の中幕を閉じました。