2024.10.13
『HAPPYEND』が全国絶賛上映中🎬
10月12日(土)、本作で撮影が行われた大阪・兵庫(神戸)での監督Q&Aトークイベントを開催しました。空監督自らが撮影にご協力いただいた関西の皆様へ直接感謝の気持ちをお伝えしたいということで、関西に行って参りました!イベントの様子をレポートします!
先ずはテアトル梅田での登壇。
大きな拍手で迎えられた空監督は「大阪は親戚や友人もいてよく来る街なのでこうやって戻ってくることができて嬉しいです」と一言。公開から1週間が経ち、作品の反響について聞かれると「なるべくSNSは見ないようにしてますが、刺さったという人もいれば、共感できなかったという感想もあったり。でも色んな意見があることは映画の面白いところだと思います。イベント時も涙しながら感想を伝えてくれたり、10代の若い方からは共感できたであったり、70代の方からは学生時代を思い出したと話す方もいたり、そういう反応はとても嬉しいです」と公開後の反響を真摯に受け入れつつも世代を問わずに様々な人々の心に刺さってることへの喜びを噛み締めました。
また、大阪での撮影場所について「ポスタービジュアルで使われているのは梅田の歩道橋で、これがなかったら作品はないんじゃないかというくらい象徴的で大事な場所」と話し、「ユウタがバイトする楽器屋さんはアメリカ村にある三木楽器さんで、デモのシーンでもお世話になりました」と2か所とも、本作でユウタとコウの変化やすれ違いが表現される重要な場面での撮影だったそう。特に歩道橋のシーンでは、撮影の際に通りかかった一般のおじさんに叱られてしまったんだとか。「でも話しているうちに打ち解けて、2日目の撮影では自分の家族を連れて撮影を見学しに来てくれました」とロケ地ならではの、ほっこりエピソードも飛び出しました。
質疑応答では、後半にフミたちが校長室に立てこもるシーンでのお寿司の扱いについて問われると、「校長先生の世渡り上手な部分を表現できればと思い、お寿司が包まれている風呂敷と桶には高級そうに見えるようにこだわりました。作中ではフミがもったいないことをしてしまいますが、もちろんスタッフが美味しく頂きました(笑)」と食べ物の見せ方へのこだわりを明かしました。
そして、次の質問者はなんと物語の中でAI監視システムの餌食になってしまう野球部のキャプテン!質問は、いたずらで車を直立させる発想について。「知り合いで不良中学に通っていた人がいて、その人から学校で先生の車を立たせるいたずらがあったという話を聞いて、それがすごく印象に残っていました。脚本を作る際に詳細を聞いてみると、実際は縦ではなくて横だったらしいのですが、僕のなかではずっと縦で立てられたという印象があってあのようになりました」とまさかの実際にあったこと出来事からの着想だったという驚きのエピソードが飛び出しました。
続いて本作でテクノ音楽を使用した理由について。「単純に好きな音楽だから」としつつも、「質問者の方が抑圧からの解放をイメージする音楽と言ってくれましたが、仰る通りだと思います。もともとデトロイトで働く労働者たちが、困窮している経済の中で、自らや周りを躍らせて奮い立たせるために色んな音楽が融合しているテクノができたという歴史があるんです。だから解放だし喜びの音楽でもありと思います。僕は大学の時にクラブにハマったのですが、あらゆる人々を受け入れる場所として居心地が良く、重低音を鳴らすサブウーファーを抱えて寝られるくらい好きでした(笑)直立する車と同じくらいユウタとコウがサブウーファーを持って歩いているというイメージがありました」とテクノ音楽が使用されている理由とユウタとコウに監督自身の実体験が織り交ぜられている制作秘話を明かしました。
最後の質問は海外での上映での反応について。「国によって反応の違いはありますが、何処も熱量を持って感想を伝えてくれる人は、登場人物たちと同じような経験をしていたりこのようなことは自分の国でも起きていることと話す方々。一人っ子政策や監視社会が進んでいる中国は特に若者のファンからの反響が大きかったです。」
トークイベント後も監督の周りには沢山のお客さんがつめかけ、想い想いに感想を述べたり、写真撮影が行われるなど、お客さんからの熱量を感じるイベントとなりました。
続いては兵庫・シネ・リーブル神戸へ!
お客さんの仲にも現地スタッフやロケ地となった高校の先生や生徒もいて監督は「神戸に降り立った瞬間とても懐かしい気持ちになりました。戻ってこれて光栄です」と嬉しそうに挨拶しました。
まず神戸で撮影された経緯について。「学校が全てですね!この高校がなければこの作品は絶対に撮れませんでした。拍手を送りたいです」と監督が拍手を促すとその場にいた高校関係者へ会場からも温かな拍手が送られました。さらに「神戸という街自体が大きな懐で受け入れられている感じがしました。そしてフィルムコミッションの方々からも映画愛、神戸愛を感じましたし、本気で住もうか考えるくらい大好きになりました」と神戸愛を爆発させました。
質疑応答では、はじめにキャストたちの演出について尋ねられると「メインの5人のうち4人は演技初挑戦でした。撮影前のワークショップでは物語の中でいかに自分らしくいられるかというのを意識してもらうために様々なことを行いました。良い表情の時っていうのは本人たちにとっても感情が動かされていると思います」と回答。そしてユウタ役栗原颯人さん、コウ役日高由起刀さんがシェアハウスしている話になり、「2人は撮影後本当に親友になったんですけど、5人もこの映画を通して仲良くなって本当に青春を謳歌していて。この間も一緒にカラオケに行っている写真が一方的に送られてきました。なんだか親になった気分でした(笑)」と話すと会場からは優しい笑い声が。
そしてロケ地の高校生からは劇伴について問われると、「重要なコンセプトがあって、ユウタとコウというキャラクターたちが大人になった時に自分の高校時代を思い出しているように作ることを意識しました。だから、楽しいシーンでも結末を知っているからこそ少し悲し気な音楽がついていたりと、その時にキャラクターが感じている感情とは別の視点で音楽や映像を作りました」と本作の感想でも多く届いている「懐かしさを感じる」ことへの秘密を明かしてくれました。
そして客席で鑑賞した出演者からは近未来を舞台にした質問も。「ニューヨークに住んでいる時に3.11東日本大震災がきっかけで自分の政治性が芽生えました。脚本を書き始めたときは色んな政治運動が活発な時期で、それと同時に日本の地震の歴史やそれにまつわる出来事について関心を持つようになりました。日本ではいずれまた大地震が起きるだろうと言われていて、今まで起きてきた悲惨な出来事が反省されないままその時を迎えてしまうのではないかという危機感があり、未来のことを考えるようになったのが物語を起因となったひとつです。そしてそれとは別軸で、僕にとっては友人はとても大事なのですが政治性の違いによって友情の決裂があり、その時の感情を描きたいと思ったのがこの作品が生まれたきっかけです」と物語が生まれたきっかけを真摯に説明されました。
続いて「HAPPYEND」というタイトルの話に。「一番最初は全く別のタイトルでした。ただ、本当にい色々考えて別のものにしようとなった時に、たくさん候補がある中から、結果的にHAPPYENDというタイトルを選びました。“HAPPY”が持っているハツラツとした多幸感のある五感と、“END”が持っている終末に向かう世界観のあるイメージが合わさると、映画の一番最後に感じる感情が表れているんじゃないかと思い、最終的にこのタイトルになりました」とタイトル誕生の秘話が明かされました。
そして、質疑応答終了後にはロケ地となった神戸市立科学技術高校と神戸工科高校の校長先生から花束のプレゼントが💐「お話を頂いた時に、ものづくりを学ぶ生徒にも刺激になるんじゃないかと思い二つ返事でOKしました。映画の中でたくさん使われていて嬉しく、背景となるロケ地もとても重要な部分を占めているんだなと実感しました。このような機会をありがとうございました」と監督へ感謝を述べました。また校長先生のカメオ出演シーンについて触れられ、「転職しようと思うくらいハマり役だと思いました」と先生自らが演技に自信をのぞかせる発言で会場は笑いの渦に。音楽研究室のシーンは高校の生徒さん方も美術セットに参加されるなど、まさにキャスト、スタッフ、そしてロケ地の方々のご協力によって本作が誕生したことを改めて実感するイベントとなりました。終了後はパンフレットご購入者限定でのサイン会を実施。長蛇の列ができ、大盛況でとてもアットホームなイベントとなりました。